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古木の沈黙
今回の京都行きには、夏越の祓えのほかにもうひとつの目的がありました。
妙心寺東林院の沙羅双樹に出会うことでした。
花の季節だけしか公開していないのですが、今年は昨日までということでぎりぎりでしたが
何とか足を運ぶことができたのです。
ところが開門を待ち、ワクワクしていた私の眼に飛び込んだのは
あまりにもショッキングな姿でした。
庭の中央の樹齢約300年の古木が枯れてしまっていたのです。
ご住職によれば、周囲の工事の関係などでここ数年の間にだんだん衰退してきてしまったそうで
昨年はまだ片方の枝に花をつけていたらしいのですが
今年は終に花をつけなかったのです。
境内の井戸の水位も下がっているらしく、その大きな原因は根っこの方にあるようです。
「自然の理ですね」とおっしゃていましたが・・・・・。
その古木の枝には大きな数珠が掛かっていて、黙して語らず・・・・・。
この日この寺の檀家の皆様の大きな法要が営まれており、その読経の声がむなしく聞こえてきてくるのです。
何ともさびしい光景でした。
もちろん二世たちが育ってきていますし、それなりの風情もあります。だけど私は古老の声を聴きたかったのです。
数年前からここの花のことは聞いていたのに、これまで逃してきてしまったことをこんなに後悔したことはありません。
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 生者必衰の理をあらはす
生きているうちに、生きている人に会いに行け。生きている人から話を聞け。
古木からの痛烈なメッセージでした。




沙羅双樹無常。
沙羅は暑さに弱いのでしょうか。私も鉢植えで(庭が狭いので)育てたのですが、いつも、2〜3年で枯れてしまいました。同級生の僧侶は丹波で自寺の住職もしており、そこにも沙羅の木があり(妙心寺ほど古木ではありませんが)、花の散る頃には琴の演奏会を催しています。今年は行って見ようかと思っているのですが、どうなりますか。
「相聞三」 芥川龍之介
また立ちかへる水無月の
歎きを誰にかたるべき。
沙羅のみづ枝に花さけば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。